霧の獣


その部屋は、ガラスの様なもので出来ていて、
湖の中が良く見える小さな部屋だった。


しかし、俺の入ったその部屋には
肝心の夢人の姿はなかった。



不審に思った俺は聖者に聞いた。
「夢人は?何処に居るんです?」
と。



聖者は黙ったまま俺の後ろのガラスを指さした。



俺の視線は聖者の指をつたい、
ガラスの向こうを見る・・・。



俺は自分の目の前にある光景が
とても、信じられなかった。



そこには湖の中に浮かぶ夢人の姿・・・。
「夢人っ!」
俺は必死に叫ぶが、
その声は夢人に届くことはなかった。



そんな、俺の姿を見た聖者は言った。
『ついて来ていただけますか?次にご案内しなければなりません。』
と。



俺のショックは大きかった。
混乱状態の俺は、聖者に言った。
「夢人は何であの場に居るのか?」
と。



それに対し聖者は、
『次に案内する部屋で全てお話されると思います。』
と言った。



俺はそれ以上何も言わず何も考えずに
聖者に続いてその部屋を出た。




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