嵐の日から(短編)
ヤカンを火にかけてからお母様のお気に入りだった金の縁がついた上品な茶器をとりだし、菓子皿には丁寧にお菓子を盛り付けます。
それからアーリャを喜ばせようと氷の器にフルーツを盛ってアイスクリームを乗せました。
着々と準備をするうちにベラトリスの心は落ち着きを取り戻し、嫌な考えをしめ出すことができました。
お茶道具を並び終えると窓の方へ足を向けかけ、踏みとどまりました。
―――いいえ、覗く必要はないわ。
あの子は一秒たりとも狂わずに時間通りにくるから確認なんていりませんもの。
ドアを叩く音が聞こえたらニッコリ笑ってお迎えするの。
それからお互い大喜びして当たり障りない話をするのよ……。
窓を覗いたって嫌なものが視界に入るかもしれない……まして『真っ黒くて大きなもの』がくるとわかっているならなお具合が悪いじゃない……―――
そう思うとベラトリスは氷の塊を喉に詰め込まれたように顔がひきつりました。
――あぁ、嫌だわ。
こんなときにヴァーニャがいてくれたなら、どれほど安心していられることかしら…。
本当はアーリャと話していても当たり障りない会話しかないからつまらない。
でも、わざわざ来てくれる友達は彼女しかいないのだからもっと仲良くなりたいのに…
…なるのが怖い!
大切な人になったらヴァーニャみたいに遠くへ行ってしまう気がして…――――
そのとき、ドアを叩く音が聞こえてきました。