Sugarless -君だけがいた時間-
アパートに帰ると、玄関の鍵を探してバッグの中をまさぐった。指先に金属の手触りを感じ、それを掴んで顔を上げる。
その拍子に、郵便物であふれかえったポストが、うっかり視界に入った。
くだらないチラシやら、化粧品のセールのお知らせやら。一方的に私のスペースに入ってくる、忌々しいものたち。
私は何も見なかったふりでスルーして、部屋の鍵を開けた。
隣りの部屋から、食器の割れる音が聞こえてくる。またケンカだ。
最近ひとり暮らしを始めたこのアパートは、壁が薄い。だから隣りの夫婦が各日ペースで夫婦喧嘩してるとか、知りたくなくても知ってしまう。