Sugarless -君だけがいた時間-
ギイイ……と音がした。まるで世界が割れるような音。
扉が、ゆっくりと開く。
隙間から微かに見えた太陽。
だけど次の瞬間にはもう、閉ざされる扉の向こうに光は逃げていった。
男の人が立っていた。
彼は私に歩み寄り、手を伸ばした。
ひんやりとした手。
その驚くほど冷たい感触を、頬に感じた。
代わりに、唇は熱くなる。
彼の唇が触れる。
影しかないこの部屋で、私は染まる。
染められてゆく。
ふさがれた唇の端から、熱い息を押し出して、天井を見上げた。
どこにも窓はない。
まあるい、天井。
私の地球。
決して見ることの出来ない空を想い
私はその残酷を甘受する。