Sugarless -君だけがいた時間-


目を覚ますと、朝はとうに過ぎていた。昼前のにぎやかな喧騒が、窓から聞こえた。


私はスマホを手に取り、ボタンを押した。


『……もしもし?』

「久しぶり、楓」

『……早紀?』

「うん」


ベッドに寝そべったまま、目をつむる。カーテンを通り抜けた日光が、部屋中にだらしなく広がり、私のまぶたの裏にまで届いた。


『すっげえ。久しぶりじゃん』

「うん。最近どう?」

『元気してるよ。お前は?』

「元気だよ」


……不思議。

太陽に邪魔されたこの部屋でも、瞳を閉じて、あなたの声だけ聞いていれば、まるですべてが影のよう。

< 23 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop