Sugarless -君だけがいた時間-
目を覚ますと、朝はとうに過ぎていた。昼前のにぎやかな喧騒が、窓から聞こえた。
私はスマホを手に取り、ボタンを押した。
『……もしもし?』
「久しぶり、楓」
『……早紀?』
「うん」
ベッドに寝そべったまま、目をつむる。カーテンを通り抜けた日光が、部屋中にだらしなく広がり、私のまぶたの裏にまで届いた。
『すっげえ。久しぶりじゃん』
「うん。最近どう?」
『元気してるよ。お前は?』
「元気だよ」
……不思議。
太陽に邪魔されたこの部屋でも、瞳を閉じて、あなたの声だけ聞いていれば、まるですべてが影のよう。