水に映る月
 

─ お酒、飲んだのかな‥



アルコールの匂いを感じた。


外の冷気に晒されていた彼の服は、ひんやりと頬に冷たかった。


「ケイちゃん‥。ケンカしたん?」


あたしは、また問い掛けた。


ギュッと抱きしめられたままだから、顔は見えなかった。

慧は、首を横に振ったみたいだった。


「心配するなってゆーたやろ‥。純ちゃん、メシある?」


「うん‥。」


“心配するな”なんて無理な話なのに、それ以上には、何も訊けなくて‥。


慧を、こんな目に合わせた誰かを許せないキモチでイッパイだったけど‥。


彼の腕から離れ、あたしはキッチンに立ち、食事の用意を始めた。


 
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