誘拐犯は…神様だったのです!




慌てる私とは違い、フウさんは沈黙のあと私の手を強く握り身動きが取れなくなってしまった



「……うっ」

「それでいい、そのまま逃げないように」


「…はい」


あ…ど、どうしよう…


「フウさん…っ」


暴れながら、フウさんを振り返り真っ正面から彼と視線が絡むとフウさんは少し驚いたように目を開く



「………」


「フウさん、お願いしますっ…手を…離してください!」


このままじゃあ、紫音さんに捕まり人間界に戻されちゃう


「フウさん!手を…手を離して!」



離してくれないと…わたしは、わたしは…


「……うっ」


ポタと私の手を握るフウさんの手に涙が零れ落ち、次々に流れる涙にフウさんの力が弱まる


「なぜ、泣いているんだ…」


「……っ」


「………紫音様、どうして凜様をこのように掴まえるのですか?」


「…なぜ?…凜を、この世界から追放するために決まっている」


「追放?」


「………っ」


「あぁ、そうだ。手間を取らせてすまない」



私の近くまで来て紫音さんは右手を差し出し、それをフウさんは眺めるように見る


「凜をこっちに」


「フウさん…っ…イヤ…」


「風神、私の言う事が聞けないのか?」


「…………」


「う…ふ、フウさん」


「………」




何とも言えない空気が流れ…もう、ダメだ…


フウさんが紫音さんの言うことを聞かないはずがない



そう、何かも諦めた時だった―――…




グイッ―――…


「え………ひゃ」


腕を強く引かれたかと思えば、私の目の前にはたくましい背中


え………


紫音さんとは違う、その背中はフウさんで……



「……………」

「…………」


「………………」


彼は私を庇うように紫音さんとわたしの間に立っていた





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