密会は婚約指輪を外したあとで
「佐々木一馬(かずま)です」


背筋を伸ばして自己紹介してくれた彼は、天井を見上げてしまうほど背が高かった。


短めに切り揃えられたダークブラウンの髪。

ノンフレームの眼鏡。スーツに白シャツ、ネクタイもきっちりと締めていてすごく真面目な感じ。



動物に例えると──

さっき一目惚れしたあの人が、近寄りがたい雰囲気の黒猫なら。

目の前の彼は人懐っこいゴールデンレトリバーかな。


私の好みとは少し違うけど、良い人そうでよかった。

少なくともハズレではない。



「深瀬奈雪です」

私も彼にならって自己紹介すると、一馬さんは目を細めて人好きのする笑顔を見せた。


「なゆきちゃん? 可愛い名前だね。なゆちゃんて呼んでもいい?」

「はい。喜んで」


“なゆ”という響きが気に入って、私は快く返事をした。
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