記憶混濁*甘い痛み*2
ほんの少しだけ細波の立つ心を静める為に、友梨は、久しぶりに教会に出向いた(和音との懺悔の記憶は消えている)
すると中には先客がいて、振り向いたその人と、いきなり視線がぶつかってしまった。
「……条野さん」
友梨は、ハッとして息を飲んだ。
振り向いた和音の、涙に濡れた綺麗な泣き顔に魅せられた。
何て切ない、狂おし気な顔をなさるのかしら……
私の胸まで苦しくなって、悲しみがじわじわと広がってしまいそう……
「……」
突然の友梨の登場に、和音は涙を止めて、普通に接する事が出来なかった。
ダメだ……タイミングが悪すぎる。
和音は友梨から顔をそらすと、何も言わずに黙ってしまう。
けれど友梨はそんな和音を見ても何も言わずに、キリストの前で跪いて祈り始めた。
和音は暫く、美しい瞳を閉じて祈り続ける友梨の姿を見つめていたものの、何かを口にすると全てを壊してしまいそうで、やるせない想いを隠し、黙ってその場を去る事にする。
けれど、コツコツと石の床を歩いて友梨の側を通り過ぎようとした時に。
「…あの、条野さん?」
と、友梨から呼び止められる。