記憶混濁*甘い痛み*2
「条野さんが命を粗末にされたら、条野さんの奥様とお子さんも消えてしまいますの。条野さんの心の中の、奥様とお子さんと、そしてイエスさまも一緒に逝く事になりますのよ?奥様はそれを望まれて?」
「……いえ。でも……もう限界だ……」
「……」
「オレはそんなに、強い人間じゃない。弱くて意気地のない、妻と子を守る事も出来なかった、どうしようもなく愚かな人間だ……!」
この、和音の言葉に。
「……弱くない人間なんていませんわ!」
友梨の言葉が強くなり。
「…深山咲…さん?」
和音は、顔を上げた。
すると友梨は、先ほどよりも大きく肩で息をしており、零れ落ちる涙を止めようともせずに唇を噛みしめていた。
「弱くない人間なんていない……あなたの奥様も……きっと、そんな弱くて繊細なあなたを認め、愛された筈だわ!」
そう言うと友梨は、心の中で芳情院に謝罪をしてから。
「……祈りが必要なの。あなたが望まなくても……イエスさまは、あなたを愛してらっしゃるわ。それは祈りの中で初めて気付く事ができるの。それでもイエスさまを信じる事が辛いなら……」
「……」
「……貴方の分まで、私が貴方の幸せを願い、祈り続けますから……!」