妄毒シチュー

ただ、唇を見られているだけなのに。
おかしくなりそうなくらいドキドキする。

今にも触れそうな程近づいた唇に、彼の吐息が柔らかく触れる。

彼の甘く色っぽい雰囲気に酔って目眩がしそう……。




「……なに、バカな事言ってんの」

必死の思いで脳みそから理性と、喉から声を絞りだし、その綺麗な唇から顔をそむけた。

「そんな事で温暖化が止まるわけないじゃん」

「あ、バレた?」

今までの色っぽい表情が嘘の様に、明るい天使の笑顔で笑いながら彼が体を離した。

ほっとして、一気に肩の力が抜ける。



何、ドキドキしてんのあたし。
昨日彼氏にフラれたばっかなのにバカじゃないの?

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