妄毒シチュー

動揺がバレないように、こっそりと深呼吸を繰り返していると
彼の長い指が優しくあたしの髪に触れた。

「ミナちゃん。髪の毛、短いの似合うよ。ばっさり切って正解だったね」

「え?」

驚いて顔を上げたあたしに、彼は綺麗な唇を上げて意味深に笑ってみせた。




ねぇ、どうして
あたしが髪を切ったの知ってるの?









昨日の夜、切ったばかりの短い髪が
窓から入って来た夏の風に優しく揺れた。


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