妄毒シチュー
「静かにして」
そう言いながらあたしの左手を取り、手首に長い指を這わす。
「ほら、もう毒が効いてきた。こんなにドキドキしてる」
手首に透ける青い血管を指でゆっくりとなぞり、肌をつたって上ってきた指が首筋に触れた。
「脈が早くなってる」
どくん、どくんと脈打つ頸動脈。
それは彼に触れられて、さらに勢いを増す。
「身体が熱いでしょう?息苦しいでしょう?」
クスクス、とニセ天使が笑う。
あたしはソファーに横になったまま、その綺麗な笑顔にみとれていた。