天使のような笑顔で

emotion

HRが終了すると、そのまま担任の立花先生の英語の授業が始まった。

もちろん、隣の彼女は教科書がまだ無いわけで。


「すいません、迷惑掛けちゃって」


俺と彼女の机をくっ付けて、間に俺の教科書を挟む。

別に俺は十分見えるから問題ないんだけど、彼女はさっきから何度も頭を下げてくる。


「だから…もう気にしなくていいよ」


俺も、何度もそう答える。


この天使は、どうやら律儀な性格らしい。


「高崎君は、いい人ですね」


面と向かってそんな事を言われるなんて、思ってもみなくて。

何だか、照れくさくて仕方ない。


「別に…普通だよ」


「その普通が、なかなかできないんですよ」


そう言って微笑む彼女は、気付いているんだろうか?

自分の笑顔が、人にどれだけ安らぎを与えるのか。


「桜庭さんは、彼氏…いるの?」


言ってから、自分で驚いてしまった。


何でいきなりそんな事訊いてるんだ?俺。


「……?」


案の定、彼女もきょとんってしてるし。


そりゃそうだ。

会って1時間足らずの奴にそんな事訊かれたら、誰だってきょとんってなるさ。


「悪い。今の…忘れて」


右手を軽く挙げ、そう謝った。

変な事を訊いて、印象悪くなってないといいけど。
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