~とある教師と優等生の恋物語~
太郎の秘めた苦悩をさらに深めるように……


大学一年の時修司の誘いにのり、気まぐれで出品した“芸術の森美術展”で俺はまさかの入選を果してしまう。


最初はただ「おめでとう」という言葉に純粋に「ありがとうございます」と喜びを笑顔で返す日々が続いた。


けれども名のある画家の腹違いの息子の受賞は


世間ではいつしかゴシップ的な部分だけがライトアップされるようになり、


それはさらに大きな話題になりいろいろな尾ひれをくっつけメディアを騒がせた。


俺の実母の出生。水商売時代の写真と親父から受け取ったお金の推定額。


匿名とされながらも、明らかに分かる太郎の略歴。


『才能は弟のがあるよ』、『彼は兄貴が嫌いだからね』という太郎の友人や俺の友人を名乗る輩〔ヤカラ〕の証言。


そして極めつけは、俺が『妾の子として虐げられた日々を堪え、今やっと報われた』とインタビューに答えている記事。


“妾”と表現されていたけれど、俺の実母と親父の間に愛があった訳ではなく


一晩、二晩程度の関係であったのに、俺が出来てしまっただけの事。


実母がよく「あんたが出来てくれたから、あたしはこうして養育費を貰えるんだ」と俺の頭を撫でたのを覚えている。


俺の実母は、そういう人だった。
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