~とある教師と優等生の恋物語~
五歳で母親を亡くした俺を、太郎と変わりなく育ててくれたのは、継母だった。


『この子は島五郎の子供だ』と言い張り、俺をネタにお金をせびるような、そんな女の息子を育ててくれた。


「子供に罪はないのだから」と


「太郎の弟だから次郎にしましょう」と


新しい生活をくれたのは母さんだった。


戸籍上の名前は「恭一」。でも俺は次郎だった。


子供が継母に虐待されたり実の親に殺されてしまったりする時代に、

憎むべき女の息子に沢山の愛情を注いでくれた母さん。


そんな母さんを泣かす俺は、なんて親不幸なんだ…と思った。


申し訳なくて申し訳なくて。


母さんがそう言うのなら……


家族のためなら……


もう描かないって決めたんだ。


俺が描くだけで周りが傷つくのなら、描く必要なんてないと思った。


結局あの曰くつきの入選した絵は、一度も飾られる事なく父の作品庫にしまわれた。


そして――


俺は大学卒業後家を出て、


太郎は芸術家の道を進む事をえらんだ。

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