もっと溺愛以上


初めてのキスは、涙の味もした。

何度か、軽いキスを交わしていると、父さんが言っていた

『溺れる』

という気持ちがわかるような気がした。

きっと、今、私が有星に対して抱いている気持ちに違いない。
愛さずにはいられない、他には何もいらない気持ち。

きっと、こんな気持ちを抱えたまま、父さんと母さんは生きているんだ。

有星と気持ちが通じ合った、今の私なら、わかるよ。



幸せな気持ちでいると、突然、大きな音が部屋に鳴り響いた。

「え?俺の携帯?」

そっと私の体を離して、ポケットから携帯を取り出した有星は、一瞬顔を歪めた。

「もう一組の面倒くさい夫婦からだ」

小さくため息を吐いて、電話に出た有星は、私の手を握り、指を絡めてきた。
嬉しくて、私もすぐに握り返した。

「もしもし、うん、桜の家にいるから。……は?……またとったのか?
いつの間に、そんなすごい仕事してるんだよ。
で、母さんは?……わかった。おめでとうって言っておいてよ。
竜我も建築の勉強してるし、そっちも含めてマスコミ騒ぐんじゃねえのか?
……わかってる。しばらくは気を付けるから。
じゃあな」

話し終わった有星は、疲れたような顔をして、天井を仰いだ。
どことなく苦笑しているようにも見えるけれど、何があったんだろう。


< 21 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop