飼い犬に手を噛まれまして

 初めて来た場所で綺麗な夜景とシーフードディナーを、友達でも恋人でもない、たまたま出会ったワンコと打ち明け話をしながら食べている。出会いって、本当に不思議だな。


 ワンコを幸せにはしてあげられなかったけど、私はあの夜ワンコを部屋に入れてからしてあげられることは全部してあげたって自己満足してる。

 ここに深陽さんがいてくれたら最高に満足だけどな……


 でも、人の人生は、人それぞれだから、恋より仕事を選ぶ人も、仕事より恋を選ぶ人もいるんだよね。
 そのどっちが幸せかって聞かれても答えなんて出ないけど、私は私の選んだ幸せを大切にしたいと思う。

「紅巴さん。ぶっちゃけて言えば、郡司さんがいなかったら……

 俺のこと、選んでくれました?」


「選ばなかった………………と思う」
 
「何ですかっすげー曖昧!」

「だって、わからないもん。先輩がいないとか考えられないよ!」


 私には先輩なしの人生なんてもう考えられない。先輩がキスのことで怒った時は人生終わったくらい絶望的でその先の不安でいっぱいになった。



 シーフードに舌鼓しながら、胸がちくりと痛む。
 多分、ワンコが今まさにそんな顔をしているせいだ。



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