飼い犬に手を噛まれまして


「帰りましょうか、紅巴さん」

「そうだね。時間だし……ねえ、ワンコ。私、余計なことした?」



「何言ってるんですか。今更? 紅巴さんはちゃんと最期のとどめ刺してくれましたよ。旅費は退職金に上乗せ返しますから安心してください。親父は金で解決するのが得意だから、それくらいならしてくれるはずです」

「え、それ悪いよ……」

「いいんですよ。さ、タクシー来ましたよ」


 行きの顔と帰りの顔が全然違う。

 ワンコはさっと手を挙げてタクシーを停めると空港名を告げた。



 これでよかったんだよね。深陽さんにはワンコの気持ちが伝わったんだよね……と小さく頷いて、ワンコの隣に座るとタクシーは走り出した。

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