飼い犬に手を噛まれまして
広い会場の、真ん中あたりにある招待席に三人して案内されて……待つのは、フェスティバルの授賞者の発表だ。
会場のあちこちに懐かしい顔ぶれが揃ってる。山咲さんに須田さん、課長や専務。社長は来ていないみたいだ……あれから、どうしてるんだろう?
会場に大きな音楽が鳴り響き、スポットライトが輝く。私には久しぶりのきらびやかな世界。
「あ、郡司先輩みつけた!」
「本当だわ、目立っていいわね。美形だからすぐ目につく。なんであんな素敵な男が茅野なんか選んだんのかしら」
「萌子先輩……そういうの心の中で呟いてください」
「あははは、萌子先輩面白いです! あ、今度三人でランチしません?」
萌子先輩は、あら、聞こえてた? なんてわざとらしく、ごめんねー本当のこと言っちゃって、と頭を下げながら、朋菜に「行く行く! 主婦て退屈なのよね」と盛り上がる。
会場の照明が、少し暗くなった。
いよいよかなぁ……
郡司先輩、自信満々みたいなこと言ってたけど、どうなんだろう。
授賞式は、まず退屈な挨拶から始まり、朋菜が隣で大きな欠伸をした。
そこそこ有名な芸能人が出てきた時だけ首を伸ばしてみてたけど、退屈すぎて萌子先輩とランチ談義に花を咲かせていた。
「お待たせいたしました。それでは、今年のBNJフェスティバル、最優秀賞の発表です」
「きた! 二人とも、発表ですよ! 静かにしてください」
お願い!
郡司先輩の名前が聞きたい!