飼い犬に手を噛まれまして

「紅巴、同級生て何の話だ?」

「えっ! わ、わからない……あの、それより、おめでとう!」

「ありがとう。紅巴悪いんだけど、今夜は帰れそうにないんだ」


 先輩が心底申し訳なさそうな顔をした。今日は二人でお祝いしたかったけど、仕方ない。その背後には、まだ取材したそうなマスコミの人たちが黒山のようにひしめいている。

 先輩は、皆のものだし……



「ううん、大丈夫。私、先に帰ってるね」


「そうだな。だけど、ここのホテルに部屋を用意してあるんだ。よかったら、紅巴使ってくれよ」

「へ? へや?」

 先輩は耳元で囁き、そっと手のひらからスルリとカードキーを渡してきた。

「七階の角の部屋」

「え? あ、うん……いいの?」

「いいよ、じゃあ」

「うん、じゃあ……」

 
 耳元で囁かれた声だけを残して、先輩はあっという間にマスコミに囲まれた。




 
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