女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 売り場に戻ると、竹中さんが興奮で顔を赤くして待っていた。

 まさか、もう田中さんは喋っちゃったの?とちょっと呆れて隣を見ると、田中さんは居なかった。

「小川さん、小川さん、誰が売り場に来たと思います?」

 ・・・・何だ、小林さんの話じゃないみたい、と息をついて、私物鞄をしまいながら尋ねた。

「売り場に?さあ、誰?」

「百貨店の社員さんですよー!大きくて、長い髪をくくってる人です!」

「え?桑谷さんが?」

 竹中さんの興奮が判った。あんな目立つ男の人がチョコレート屋にきたら、そりゃあビックリだろう。もしかして鮮魚売り場のエプロン姿で来たのだろうか、と考えて私は苦笑する。あの格好はまさしく港の卸業者さんそのものだから、このやたらと小綺麗なお菓子売り場には似合わない。

「小川さんは休憩ですって言ったら、じゃあまた後でって言ってました」

 竹中さんはうふふふ~と笑って、カウンターに身を乗り出して聞く。

「いつの間に仲良くなったんですか~?もしかして、彼氏になったとか?」

 お目目、超キラキラ・・・。私は考えもせずに事実だけを述べる。

「・・・いや、まだ」

「まだってことは、見込みあり?!」

「・・・あっちは好いてくれてるみたいだけど・・・」


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