女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 斎はこの子を手放したくないはずだ。可愛くて、大人しくて、部長の娘。将来が安泰だと思うはず。それを利用するはず。私とこの子が話しをしたことはまだ伝わってないのかな?まさか、田中さんが喋らないはずないと思うけど。

 機械的にお弁当を食べていたら、前から小さな声が聞こえた。

「・・・小川さんは、今彼氏はいらっしゃるんですか?」

 彼女が顔を上げて私を見ている。私は答えにちょっと詰まった。

「・・・彼氏・・・と呼べるかどうかだけど、私の傍にいて、気にかけてくれようとしている人がいるの」

 その人とは今のとこ、セフレのような関係よ、とは言わなかった。この可愛い子には言えない。

「ええと・・?」

 小首を傾げている。よく判らなかったらしい。彼女の世界では、男ってのは、彼氏か、好きな人か、友達か、その他、なのだろう。

 説明するのは難しい。だって・・・抱き合ったけど、別に付き合ってないし。私は小さく唸る。

「うーんと・・・。まだ自分がどう思ってるのかがよく判らないの。その人のことを、信頼していると思うし、好きだとは思う。でも、もし付き合ってといわれたら、はいと言うか判らない」

「何だか、私には難しいです」

 本当に考え込んでいた。私は笑って、パッパと手を振る。

「そんな考えないで。今は忙しいし、棚上げにしてるの、私も」


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