女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
それからは二人で慎重に斎の話題は避けて、昔の恋話なんかをした。彼女の表情も生き生きしてきて、笑い顔も見られた。良かった、と安心する。
何にせよ、この子が斎に警戒心をもつようになったことはいいことだと思った。
売り場に戻ると、隣の店の友川さんが、店食で楽しそうでしたね~、小林部長の娘さんと、と言ってきた。
「そう、初恋の話で盛り上がっちゃって」
私がそう答えると、ふーんと唇をとがらせた。
「守口店長の元カノと今カノが何話してるのかと思ったら、初恋の話って・・・。おもしろくなーい」
「こらこら、何て正直な」
それに、売り場ですよ、笑顔笑顔とたしなめる。
それから休憩後の商品出しにストック行ってきます、と紙袋とメモを手に売り場を出た。
込み合っている通路を器用に避けながら進み、倉庫に入る。
すると、前から斎がやってきた。
「あ」
「あ?」
斎が私を見て出した声に、思わず連動してしまった。あ、って何よ、一体。何だろう、私を探してた?私は全身に警戒心をたぎらせてバカ野郎を睨んだ。
商品がたくさん入った袋を持ったまま、斎が頭で倉庫の奥を指した。ついてこいってことらしい。
・・・行くべきだろうか。かなり怪しい。だけど私も倉庫に用があるわけだし、ヤツも一杯商品を持ってるってことはすぐに売り場に戻るのだろう。危険はなさそうだ。そう思ってやつの後ろから私はついていく。