女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
離れて行こうとすると、あ、と後ろで声が聞こえた。何だろうと振り返ると、彼は他所を向いてぽりぽりと頬をかいている。
「何ですか?」
私はまだ段ボールの団体さんを抱きかかえたままで聞いた。何言い渋ってるんだろう。これ安定悪いから、早くしてくれないかな、そう思っていた。
桑谷さんは口の中で小さく、あー・・・、と零した後、言い難そうな顔をして言う。
「・・・・あいつのこと名前で呼ぶのやめてくれ」
私はその場で目をパチクリする。・・・あいつって、斎のことよね。うん?何だ、いきなり?
「は?・・・どうしてですか?」
首を傾げる私を見て、桑谷さんは、うー・・と唸り、手で頭を軽く叩きながら歩き出して私の横を通り過ぎた。振り返りもせずに、通り過ぎざまに小さく呟く。
「・・・判れよ」
遠ざかる桑谷さんの背中を見ていた。行き交う人を避けて立ちながら、私はこっそりと笑う。
――――――――――勿論、判ってる。
ヤキモチ焼いたんだってこと。