女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
それを避けながら、ダンボールの収集場所まで持っていくと、今度は桑谷さんが前からやってきた。
「お疲れさん」
片手をあげながら歩いてくる。私はお疲れ様です、と会釈をして、周囲に顔見知りがいないことを確認してからそっと近づいて、小さな声で言った。
「さっき、斎がまた30万返してきたんです」
「え?」
桑谷さんの笑っていた顔が真顔になった。
「・・・さっき?」
「はい、今さっきです。倉庫で斎に呼び止められて」
考えるときの癖なのか、桑谷さんは人差し指を唇にあてて唸った。
「・・・・判った。今日は上がり、いつ?時間取れる?」
私は頷く。
「今日は中番なので、7時上がりです。晩ご飯行きますか?」
「俺は早番だけどちょっと残業するんだ。でも7時には上がれると思う。じゃあ、前の店でいい?」
ああ、あの何が創作なのか判らない居酒屋か。でもご飯は美味しかった。思い出して、私はついニッコリした。
「はい。じゃあ終わったら先に行ってますね」
「宜しく」