女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
「・・・・」
パタン、と音を立てて携帯を閉じた。
・・・・うるせー、バカ野郎。何が話よ、今更何を言うつもり。私はぐっと目を閉じる。男なんて、皆、畜生以下だ・・・。
携帯電話は布団の上に転がして、そのままで布団を畳んでやった。これでもう煩いことは言えないでしょ、そう呟いて。
『心配している』
桑谷さんが送ってきたメールを思い返して、ムカついた。
テーブルの上に出しっぱなしだったグラスを掴み、私は勢いよく台所の壁に投げつけた。
がちゃん、と結構な音を立てて割れて散らばる。
その破片をじっと見詰めた。
壊れてしまったガラス。
壊れてしまった、あの人への信頼―――――――――
そして私は立ち上がり、出勤の準備を始めた。
仕事はうんざりすることもあるが、少なくとも時間を潰すための有効な手段だ。私は今日という日を消化しなくてはならないし、私が死に掛けたことなんか関係なく今日も世界は動いている。
斎は逃げた。
売り場責任者不在になったはずの今日の『ガリフ』がどうなっているか、確かめに行かなければ。