女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
恐る恐る始まった営みは、最初は困惑した手付きで、それから丁寧な仕草で繰り返される。だけれども、私の体のスイッチが入った時にガラリと支配関係が変わったのが判った。
彼はそれまで静かに私を観察していたようだった。手を添えるだけにして、自分の欲望は押し殺した状態で、ただ私のすることに従っていた。それが突然にっこりと笑って、俺の番ね、と目を光らせる。その変化に私は驚いて、つい呼吸を忘れてしまった。
彼の冷静な瞳にゆらりと獰猛な光が揺れるときは、情熱的な愛撫の始まりだと判った。
柔らかく押し倒されて、眩暈がするほどの激しいキスを受ける。
優しいけど待ったなしの指と舌に思わず吐息を漏らして声が出た時、彼が呟いた。
「・・・今のは、演技?」
彼の作る熱の波に流されかけていた私は一瞬ハッとして、持って行かれそうな理性を捕まえて答えた。
「・・・違、う・・・」
体が震えていた。熱が上がって汗をかき、隅々までに血が行き渡っているのを感じる。こんなことは本当に久しぶりだった。
思考はまどろみ、溶けて流れる。
彼の指がもたらす一つ一つの快感に一々反応してしまう体に驚いていた。
私の答えを聞いて、桑谷さんはくくく・・・と低い声で笑った。
「それは何より」
・・・じゃあ、もう遠慮なしで。そう低い声が聞こえたと思ったら、私は目など開けていられない状態に放り込まれた。