女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~


 彼が私の腰を捕まえて、激しく動き出す。抵抗できない快感に目の奥がチカチカ光る。自分が大きな海になって、潮の満ち干きで揺れているようだった。

 部屋の壁には卑猥な水音が大きく反射している。二人が作る影が一緒に動いているのが見なくても判った。どろどろに意識も体も溶けてしまう。

 ああ、こんなに、熱くちゃ・・・壊、れ―――――――――――

 私の全身に痙攣を引き起こして彼は笑う。その声でさえも、今は脳天に痺れをもたらすほどだった。

「・・・悪いな、もう・・・そろそろ――――――――」

 焦らすこともしないで、彼は激しく、一直線に解放に向かう。

 熱に翻弄されて、すべてが真っ白になった。

 何も判らなくなって体がシーツに沈む。はあ、はあ、と荒い自分の呼吸が耳の奥に響いていた。

 彼が呼吸を整えながら、大きな手で私の熱を持った頬を撫でる。そのままで、私の乱れた髪を指先で梳きながら言った。

「・・・・・不感症じゃあねえな」

 混沌とした私の意識の端っこに、その声が引っかかった。

 うっすらと目を開けて、さっきまで私をめちゃくちゃにしていた男を見上げる。

「君は、不感症、なんかじゃない」

 ベッドライトの明かりの中、とても満足そうな笑顔をみせて、彼は言った。


「君を抱けて、光栄だ」



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