女神は不機嫌に笑う~小川まり奮闘記①~
逞しい腕に抱かれて眠った。
仕事の後で、命の危険に晒されて、アルコールもたっぷり飲んでいて、しかも久しぶりの激しい運動で疲れていたのに、明け方にふと目が覚めた。
カーテンの隙間から見える空はまだ暗く、外も静かなようだった。
頭の下の腕が温かい。
規則正しい寝息を立てて、男が間近で寝ている。その寝顔を見て、ハッとした。
・・・・なんて安心感だろう・・・。
うっすらと、序序に明るくなっていく部屋の中、一つのベッドで誰かと眠るなんて、いつぶりだろう。
感じないことが苦痛で避けていたし、最後に斎に抱かれたのはもう去年の終わりの話だ。それでなくても斎はいつも泊まらずに帰って行ったし、夜にたずねてきたのは睡眠薬騒動のあったあの夜のこと。
もう随分長いこと、一人で眠っていた。そしてそれは気楽だったけど、やっぱり寂しかったんだと判った。
死に掛けて、助かって、色んなショックで壊れた心を治すために斎への復讐を誓った。
原因を抹殺しないと私は立ち上がれないって思ってた。
自分もバカだったのだからと諦めて、色んなことを事務的にさっさと処理してきた。
だけどそれは―――――――――――
更に、自分の傷口をえぐってたんだった・・・。