pianissimo.
私に会わなかったとしても、ライガを傘に入れてくれる女の子はいくらでも居たのに。そんな誰かと相合傘で歩いて帰ったなら、こんなにも濡れずに済んだのに。

そう思ったけれど、口にはしなかった。


そんなこと……。
ライガの方がよっぽどわかっている、知っている。




「着いた」

言ったと同時に、ライガはそっとブレーキを掛ける。すぅっと減速して自転車は滑らかに停止した。


慌てて荷台から飛び降りると、ライガも長い足を軽やかに持ち上げ自転車を降りた。



「サンキュッ」

激しい雨に叩きつけられながらも、ライガは清々しく笑って礼を言う。鬱陶しい雨も、ずぶ濡れの全身も、全く気にならないかのように爽やかに幸せそうに。

そんなライガを不思議な気持ちで見ていた。


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