蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜抱き続ける疑問〜‡

術者を見つけられただろうか。

あの浄化は完璧だった。
この何年か悩まされ続けた頭痛もない。
空気が澄みきっていて、まるで聖域に似たセイレン国の様だ。

早く会ってみたい。
だが…と思う自分も否定できない。
会いたいと言う思いと。
会いたくないと言う思い。

姉であったら良い。
けど、姉であったなら会いたくない。

自分の心がまるで分からなくなっていた。

そうして考えているうちに、いつもの疑問が頭をもたげてくる。


”何故姉は、死ななくてはならなかったのか”


父王が死に、国が倒れたと知ったのは、エルフの国に着いた次の日だった。
送り届けてくれた騎士や、侍従達だけでなく、城の兵達も慌ただしく城を飛び出していくのを、早朝の光が差すバルコニーから見送った。
そして、祖父だと言うこの国の王、エルバンが沈痛な面持ちで伝えにきた。

『カルナ王は亡くなられた。
それと…リュスナ姫も…』
『ッな…に…っ?
なんで…っ?』
『ねぇさま…っやっぱり…ッ』
『っどう言うこと?!シリスッッ。
こうなるって知ってたのか?!』
『マリス…シリスを責めないで…。
予想できた事なのです…リュスナ姫ならば…と』
『すぐにご遺体を引き取りに行かせた。
リュスナ姫だけでもとな…』
『ありがとうございます、お父様…』
『いや…こんな事しかできん…。
彼の姫は、民の為にお立ちになられた。
だが、民達は知るよしもない…自分達を真に解放した姫を、憎むべき者だと思い込んだままだ…この誤解は恐らく解けん…。
いや…解いてはならん。
リュスナ姫は、こうなることも承知で筋書きを立てられたのだろう…。
ご自分が悪として葬られる事によって、民達の想いをまとめ、新たな時代への区切りとなるように…』

分からなかった。

だって、姉が悪になんて思われるはずがない。
知らないのはきっと父王とその取り巻きくらいだ。
便利な道具としか見ていない馬鹿共以外、みんな知ってる。

優しいんだ。
素っ気なくても、ちゃんとわかる。
人の気持ちに敏感な人。
誰かの為に動ける人。
自分を犠牲にしてしまう人。
何一つ不満を言わない人。
誰にだって愛される人だ。
愛されなくてはならない人だ。
それなのに…。

周りにいる者達が弱いから…。
官達が、父王を諌める事もできない不甲斐ない者達ばかりだったから…。
民達が変えようとしなかったから…。

僕が、子どもだったから…。

そして、ゆっくりと沈んでいく思考を、意識を止める事などできなかった。


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