蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜愛する故に〜‡

「蒼葉様ッッ」
「なに…?」
「なにじゃないッ。
一体お屋敷で何をしたんですッ」

空とぼける蒼葉を睨み付け、彼女のいる部屋の奥へとズカズカと入り込む。

「危ない事はしないようにとッ前にも言ったはずですッ」
「別に怪我をしたわけではないんだから、問題ない」
「ッ怪我なんてしたら許すわけないでしょうッッッ」
「…っだから怪我してないから良いだろうと言っているんだ」
「暴れた時点で問題なんですッッ。
もしも犯人が刃物や銃を所持していたらどうするつもりだったんですかッ」
「刃物は持ってたみたいだけど、出させなかったし、拳銃みたいな重い物持ってるように見えなかった」
「ッ…ッッ知ってたんなら余計に悪いッ。
そんなのを相手に立ち向かおうとするなッ」
「ッだからっ、今まさに出そうとして危険だったから、防衛したんじゃないかッ」
「立ち向かうなと言ってるんだッ」
「やらなきゃやられるだろうがッ」
「だから戦おうとするなと言ってるんだッ」
「私がやらなきゃどうすれば良いんだっ」
「逃げればいいでしょうッ」
「お祖父様を連れてっ?。
できるわけないだろッ」
「ッあなたさえ無事なら良いんだッッ」
「何だとッッ…っ」

そう言って乱暴に蒼葉を抱き締めた。
震える腕を止める事ができない。

「っ…ッ……」

腕の中で、動揺する蒼葉に構わず、きつくきつく抱き締めた。
自分の中で、怒りとそれに反する安堵がごちゃ混ぜになっているのがわかる。

「…よかった…っ。
あなたが無事で…良かったっ…」
「…っ」

少し力を弱めると、蒼葉も身体の力を抜くのがわかった。

「…過保護…」
「ッおい…ここは『ごめんなさい』だろ…」
「…」

そっぽを向く蒼葉に怒りよりも、逆に毒気を抜かれた。

「はぁ…あんまり皆に心配をかけないでくださいね」

ゆっくりと腕を解き、目を会わせようとしない蒼葉に苦笑しながら、一礼して扉へと向かった。

「…すまなかった…」

背をむけた私にそっと呟いた蒼葉の言葉が、染み込む。
扉を開け、もう一度蒼葉に頭を下げてゆっくりと閉めた。

「…まったく、素直じゃない…」

ふっと扉を背に呟いた。


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