蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜物語り〜‡

ナルス達を籠から出した姫は、願いました。

『私を精霊王の下へ連れて行ってください』と…。

けれど、すっかり人間を信用できなくなっていたナルス達は、当然良しとしません。

姫はどうしても精霊王の下へ行かねばなりませんでした。
なぜなら、姫は気付いていたからです。
王の今の行動が、土地神を怒らせてしまっている事に。
この国が永く繁栄するには、今の王ではもう駄目だと言う事に。

戦いに狂ってしまった父を止め、この地を鎮めるには精霊王を頼るしか方法は残されていませんでした。

ですが、ナルス達にはそんな事情などもうどうでもよかったのです。
自分達に酷い扱いをした人間達がどうなろうと構いはしません。
当然です。
人間達が土地の怒りを買って滅んでも、その後に土地を鎮めれば良いことなのです。
ナルス達は土地を、自然を守る為に生まれてきたのですから。

姫に構わず外へと飛び出したナルス達は、迷わず帰るべき所…精霊王の下へと向かいます。

姫は決意しました。
彼らについて行こうと。
ナルス達も気付いていましたが、撒くようなまねはしませんでした。
姫の瞳が強く純粋な意志を宿していたからです。

身体の弱い姫には、当然過酷な旅となりました。
一日中歩き続け、身体は極限状態まで酷似され、意識も朦朧としていました。
それでも身体を動かし続けたのは、姫の強い意志。
小さな頃から思い続けたもの。

生まれた時から身体の弱かった姫は、王の子としての勤めを果たすことに、誰も期待してはくれなかった。
ただ与えられた部屋で大人しく過ごす事を強要される日々。
姫はそれが耐えられなかったのです。

精霊王の森に着く頃、姫の行動を知った王が姫とナルス達を追い、城を出たのでした。

ようやく精霊王の下へと辿り着いた姫は、もう立つこともできないほど疲弊しきっていました。
それでも必死に想いを訴えたのでした。

『どうか、わたくしの願いを聞き届けてください。
乱れてしまった国を救ってください。
過ちを犯し続ける父を助けてください。
その為ならばわたくしは何でも致します』

ですが、精霊王がその願いを聞き届ける前に王が、辿り着いてしまったのです。

王は怒り狂っていました。
姫が初めて勝手をした事に対して。
そして、逃げ出したナルス達に対して。
更には、強大な力を持つ精霊王という存在に対して、その身勝手な怒りを向けたのです。


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