蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜決意の時〜‡

王は精霊王ごとナルス達に斬りかかりました。
ですが、そこに姫が身体を滑り込ませたのです。

精霊王は、純真な心を持つ姫を手にかけ、あまつさえ、森を血で汚した事を怒り、王の身体に流れる気を解放しました。
すると、王の身体は砂となって脆く崩れ去り、魂だけが精霊王の下に残りました。

黒く円い石となった王の魂。

命が尽きようとしている姫。

じっと成り行きを見ていたナルス達。
その中の二匹が精霊王に願い出ました。

『私の命を姫に』
『私の命を姫に』

それを聞き届けた精霊王は、彼らの魂を石に変えました。

青いく輝く石と赤く輝く石。

そして、手にしていた腕輪を抜き、三つの石を付けました。
真ん中に黒い石を、左右に青い石と赤い石を付けた腕輪は金に輝き、ゆっくりと精霊王の手から浮かび上がりました。
姫の上で、一際強く輝くと、僅かだった呼吸が戻り、力強く脈打ちました。
身体を起こした姫の手に腕輪がゆるりと降り、納まりました。

『黒い石は穢れを吸収し、赤い石はそれを浄化し、青い石はそれを地に放つ。
これを土地の守りとしなさい。
国を想うその純粋な心を持って祈り続ける事ができるなら、その効力は未来永劫尽きる事なく輝き続けるだろう』

国に戻った姫は、直ちに国を立て直しました。
命を貰った姫は、これまでが嘘のように健康になっていました。

やがて子を産み死した後も、子々孫々、精霊王の教えを守り、穏やかで平和な国が末永く続くのでした。



「じゃぁ、この腕輪ってこのお話の?」
「そうだね。
でも、元々ナルス達が作る木の腕輪や指環を贈るのは、『魂の祝福』って言われてる。
あらゆる厄災から守り、魔を払う効果があるんだよ」
「へぇぇ〜。
良いのもらっちゃったな〜」
「大事にするんだよ」
「うんっ」

部屋に一人になるとバルコニーへ出た。
暮れかけた今日の空は、雲に隠されている。
快の腕輪を見て思うのは、城にあった金の腕輪。
本物の『金の姫の腕輪』。
浄化の力は健在で、淡く光る三つの石には、確かに魂を感じた。

目を閉じて思う。
あの混乱する城で、腕輪はどうなっただろう。
持ち出されてしまったかもしれない。
火にまかれて焼失してしまったかもしれない。

後生の為と思いながら、何一つ残すべきものを…託すべきものを考えていなかったのではないだろうか。
私の行動は、結局混乱を煽っただけではなかっただろうか。
無用な気を使わせて、多くの者に迷惑をかけただけではなかっただろうか。

見てみたい。

私の選択の結果を…。
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