蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜不吉な予感〜‡

また何か悩んでいる。
そう感じたのは、俺だけだろうか…。

葵といる時、いつも通りだった。
学校に行く時、いつも通りだった。
屋敷に住む子ども達の面倒を見ている時もいつも通りだった。

だが、気付いたのだ。

一人で廊下を歩いている時。
書庫で本を読んでいる時。
部屋へと帰っていく時。

思い詰めたような顔が見えた。

つい先日まで輝いていた瞳が陰ってしまった。
小さい頃から側にいて、もう嫌というほどわかっている。
この場合、放っておくとろくな事にならない。

小学校の時、クラスでいじめにあっていた子を庇って標的にされ孤立し、嫌がらせに動じない蒼葉に、いじめはエスカレート。
仕掛けられた刃物で動脈を傷つけて出血多量で倒れ、一週間ほど生死の境をさまよった。

中学の時クスリをやっていた同級生を悟し、元締めのヤクザ相手に大立ち回りをして警察ざたになった上、刀傷を肩に受けて病院に運ばれた。

一人で何でもできてしまう蒼葉は危険だ。
この間の侵入者騒動でも、はっきり言って血の気が失せた。
本人は上手く立ち回れると確信している。
確かに、解決はする。
問題なのは…。

小学校の事件では…。
『これで、あの子達もこんなくだらない事しなくなる。
結果を考えて行動できるようになるよ』

中学の事件では…。
『子どもに下手に手を出すと、公の場に出る事になるって事を思い知っただろうね。
あの子も、例え少しでも、裏の世界に足を突っ込むべきじゃないって心に刻んだはずだよ』

まるで他人事。
自分が大変な事になっているのに、全て良かった事にしてしまう。
ある意味ポジティブ。
悪い意味で自虐的。
どうすれば良いのか全くわからない。
本人が全然懲りていないのだ。
先読みができるくせに、自分が負うものに無関心すぎる。
他人の為に何かをする事ができる人だ。
例え、自分の何を犠牲にしても…。

だから今回も嫌な予感がする。



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