蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜過保護に〜‡

「柚月くん…?」
「っっ葵様??」
「へへっ。
こんなとこに籠って、いったい何やってるんだい?」

葵は、まるでかくれんぼで見つけた鬼のように、嬉しそうに入ってきた。

「ここスッゴく久しぶりに入ったよ。
まだ小さい蒼葉を探しに入っていた時以来だ…。
で?君はこの頃何をやってるんだい?」
「…っいえ…少し調べものを…」
「…?それは娘に関係する事だね?」
「なぜそう思われるのです…?」
「君が必死だからさ。
それに、今回はどこに出掛けるのか娘は何も言わずに出て行った。
心配性の君が、今回は付いて行かなかった…いや…付いて行けなかったのかな?」

相変わらず、ほんわかとした雰囲気をしているにも関わらず鋭い。
核心を確実に突いてくる。

「小学生の時の遠足から、社会科見学も、修学旅行も、一人のお出かけの時も、内緒で全部付いて行ってた君がね…」
「っ…ご存知だったんですか…」
「うん。
蒼葉も何となく知ってたんじゃないかな?
学校帰りに、お友達と道草くっても、なぜか屋敷の手前で君に会うって言ってた事があったから」
「…っそうですか…」

今更ながら恥ずかしい。
過保護だと思われても仕方がないとはいえ。
今の自分を昔の自分が見たら、呆れてものも言えないだろう。
だが、仕方がない。
出会ってしまったのだ。
何からも守りたいと思う人に。
どんな些細な出来事でも、嫌な思いをしてほしくないと思う人に。
異常だと思い至った事もある。
だが、変えようとは思わなかった。
この先ずっと…嫌われようとも、陰ながら側にいるつもりだ。
異常なままで良い。

「…様子が…おかしかったんです…」
「蒼葉が?」
「はい…。
何か悩んでいるようで…辛そうで…。
出かけると言われた前日にはスッキリとした顔をなさっていたので、大丈夫だと思ったのですが…今思い返せば、悩みが消えたと言うより、何事か決心されたと言うような感じでした…」
「…前世の事かな?」
「っなぜそれを?」


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