蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜疑惑〜‡

「君は知っていたんだね。
あの子に前世の記憶があること…」
「ある方から聞きまして…。
葵様はいつ頃から気づいてらしたのですか…?」
「…あの子ね…ある時を堺にいきなり変わったんだ。
周りの者には、何かにとり憑かれたんじゃないかって言われたね〜」
「いきなり…ですか…?」
「うん。
小学校に入る頃かな?
ピタッと大人になっちゃった」
「大人…ですか…?」
「そう。
何か辛い事でもあって変わったんじゃないかと思って、『我慢しないでね』って言ったら、『充分幸せです』って返ってきたんだ。
まだ七つくらいの子がだよ。
ビックリだよね〜。
お義父さんから、一族の中に前世の記憶を持って生まれる子がいずれ現れるって聞かされてたけど、何だか不安だったよ…」
「一族に?…それで、蒼葉様に前世の記憶があると言う事、確認されたのですか?」
「いや。
確認した事はないんだ。
だって、いくらなんでも聞けないでしょ?
ただでさえ辛そうに見えたんだ。
過去に嫌な事あったみたいで…それを掘り返すみたいな事できないよ」

確かにそうだ。
大人びた顔。
憂いのある表情。
まだ二十歳にも満たない少女ができる表情ではない。
たくさんの苦労を重ねて、様々な経験をしてきた者特有の表情を蒼葉は持っている。

「そう言う君は、一体誰から聞いたんだい?」
「…前世の…蒼葉様を知ってらっしゃる方です…」
「ふぅん。
会ってみたいな…」
「っ…いえ…すこし難しい方なので…会うのは…」
「?…じゃぁ、今度君がその方に会った時、会えるかどうかお伺いしといてね」
「はい…」

葵ならば、イル達と出会っても普通に話ができるだろうと思う。
だが、万が一彼らを否定されたらと思うと、不安になる。
最悪の場合、蒼葉の立場が悪くなる。
自分には判断できない。
そう思い、ちらっとイルが隠れているだろう棚を見た。


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