蒼の王国〜金の姫の腕輪〜
‡〜答えの下に〜‡

「役者が揃っちゃったわね〜。
これも世界の意思かしらん☆」

夜が更けて間もない頃、二つの魂が戻ったのを感じた。

「レンちゃんったら、相変わらずニクいことするわ〜ぁ◎」

永い人生の中で、時折思い出す事がある。
まだ若い頃に訪ねられた言葉。

『”守護者”である事…嫌にならない…?』

よぎった事さえもない疑問だった。
最初から”守護者”であった自分には、疑問にもならない事だったからだ。
数百年も前のその時、答えはなかった。
確かに自分が動く事によって、世界は何事もなく巡る。
だが、自分が動かなければ、世界がどうかなるのかと言えば、答えはノーだ。
多少時間と犠牲が増えたとしても、きちんと世界は採算が合うように出来ている。
確かに自分が介入する事によって、時間も被害も限りなくゼロに近い解決をみる。
だが、言ってしまえば結果は変わらないと言う事だ。
自分は力も、知識も経験も、誰よりも多く持っている。
しかし、それだけの事なのだ。
虚しいと思った。
存在する事さえもどうでも良いんじゃないかと思える程に。
そんな時だった、ラダに弟子が出来たと聞いたのは…。
会ってみたいと思った。
誰とも深く関わろうとしなかったラダの想いを変えさせた者を…。

初めてリュスナを見た時、綺麗だと思った。
綺麗と言う言葉を体現したような子だと思った。
魂は煌めいて、内側から滲み出る高潔さは、回りの空気を浄化する様だった。
そしてそれ故に、醜い渦に引き寄せられる運命を持った子。
これ程までに侵しがたく、美しい者を自分は知らない。
その時、またあの問いが聞こえてきた。
この時、初めて確かな答えが出た。

『嫌になんてならない』

この子が生きられる世界を守りたい。

『リュっスナちゃん☆』
『何ですか、ナーリス』
『ふふっ呼んでみただけ◎』
『っおいっババァ、リュスナに抱きつくなっ』
『あらん☆
羨ましいの〜ぉ』
『っ…バカっ見てて暑苦しいんだよッ』
『ラダ、大丈夫ですよ。
ここはそんなに暑くないです』
『ふふっほら〜ぁ。
リュスナもこう言ってるわ☆』
『そうじゃなくてだな…』
『あんたも一緒にくっつきたいんでしょ?』
『っバッ…んなわけ…』
『ラダ…顔が赤くなっています。
そこは日差しが強そうですから、隣へどうぞ』
『っ…おう…』
『ふふふっ◎』
『ッッ…笑ってんじゃねぇよッッ』
『だって〜ぇ☆』

こんな日がいつまでも続けばいいのにと思った。
リュスナは人族で、いつまでもなんて夢で終わる様な時間しか一緒にいられないけれど、ほんの一時、人生が穏やかに終わりを告げるまで、一緒にいたいと思った。
けれど、世界は彼女に牙を剥いた。
守りたかったものは消えてしまった。
ほんの一瞬、自分にとっては、本当に瞬きの様だった。

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