Do you love“me”?
「佐々木さんは、辛くないですか?」
「んー? 辛くないって言ったらウソになるけど、でも、やっぱり好きだから。距離くらいで、その気持ちをなくしちゃう方がよっぽど辛いかな!」
「確かにそうですね……」
笑顔を浮かべた私に、ユメちゃんは目を丸くしたあと、ちょっと笑いながら頷いた。
私がこんな風に言えるようになったのは、稜君に貰った、たくさんの言葉のおかげ。
「ユメちゃん」
「はい」
「空って、ずーっと繋がってるんだよねー」
「……え?」
脈絡もないように思える私の言葉に、ユメちゃんはミンスパイを頬張ろうとしていた口を止める。
「ユメちゃんの上に今ある空は、途切れ事なく、ずーーーっと、ユメちゃんの彼の上まで繋がってるんだよ」
「……」
「ずっと続いてきた時間の中でさ、こうして同じ時代に生まれて、偶然か必然かはわからないけど、それが交わって……。それって、すっごい事だと思わない?」
「思い、ます」
「だよねー。ホント、すごすぎるよね!」
淹れたコーヒーに手を伸ばしながら笑う私に、ユメちゃんもすごく嬉しそうに笑って、
「佐々木さんがいてくれて、よかったです」
そんな風に言ってくれた。
「ちょっと! 改めてそんな事言われたら、恥ずかしいじゃん!!」
「えへへ。だって、ホントの事ですもん」
「よし! そんな可愛いユメちゃんには、パイを二個あげよう!」
「え! いいんですか!?」
「もちろーん!」
――稜君。
稜君が私に教えてくれた事は、本当にすごい事だったんだね。
だって、さっきまで泣きそうだったユメちゃんが、今はこんなに嬉しそうに笑っている。
「彼にもその話、してみます!」
そんな事を言いながら。
ユメちゃんとお茶をしながら、もう一度開いたパソコンのウィンドウ。
そこには、相も変わらず、ピッチの上を駆け回る稜君の姿が映っていた。
その姿は、何よりも私の励みで、私も頑張らなくちゃって、そう思わせてくれる。
「佐々木さん、川崎稜が好きなんですか?」
「え? ……うん。すっごく大好きなんだぁ」
晴れ渡るイギリスの空の下にいるあなたに、少しでもこの想いが届くように。
「ずっとずっと、大好きなんだよね」
あなたが、そこで精一杯頑張れるように。
「だって、すっごく素敵な人だと思わない?」
私は、10,000キロ先の空の下でいつも笑顔でいたいって、そんな風に思うんだよ。