僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?


「えっと、きのこ雑炊とカフェオレ」

「かしこまりました」


店員が横目で僕の様子を覗った。

やっぱり、どこか変に見えるのだろう。

僕は静かに目を逸らした。


「ねぇ、食べたら、あたしも一緒に東京駅まで行くから。東京駅発の大曲行き、『こまち』ってやつが出てるそうよ。六時過ぎのその『こまち』に乗ったら、今日中に大曲に着けるって」

注文を終えると、何処で調べたのか、彼女は一気にそう言って微笑んだ。


「ねぇ、大曲に誰がいるの?」

「母が……」


僕は、やっとの思いで、そのひと言を口にした。


何故って……

僕はこの時、ファミレスに溢れる食べ物の匂いに心を奪われていたのだ。

腹が減ったという感覚は、もうとうの昔になくなっていたけれど。

溢れる食べ物の匂いに、忘れ去った食欲という言葉が蘇る。

もう僕は、食べ物以外のことを考えられなくなっていた。


興奮で目が泳ぐ。


僕は自分を落ち着かせようと、目を閉じた。
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