僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?


「はい、ゆっくり、少しずつよ」


やっと彼女の方から盆が戻されてきた。

僕は、雑炊をじっと見つめると、木杓子を手にとった。

言われたように、軽くひとさし雑炊をすくい、ゆっくり口に入れる。

ほのかな米の甘みと、きのこの香りが口に広がった。

(嗚呼、これでもう一日生き延びられる)

ただ、そう思った。

一口一口を噛み締めながら、ゆっくりと雑炊を吞み込んだ。

ゆっくり食べたはずなのに、雑炊はあっと言う間になくなった。


「まだ、足りないとは思うけど、一度に食べないほうがいいと思う。ちょっと休んだら、行きましょう」


彼女は、一緒に注文したカフェオレをまだ半分ほどしか飲んでいなかった。

時間が気になるのか、何度も携帯の画面で時間を確認し、数分後、彼女は落ち着かない様子で伝票をつかむと立ち上がった。
< 13 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop