僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「あの……」
僕は、ありがとうと言っていいものか、それとも何か別の感謝の気持ちを述べたものか、言葉に詰まって固まってしまった。
「いいのよ、気にしないで。さ、時間もあるし、行きましょう」
彼女は僕の気持ちを遮るように、さっさと精算を済ませると、足早に歩き出した。
僕はその後ろ姿を必死に追ってついていく。
駅に着くと彼女は、迷わず緑の窓口を目指した。
どうやら、彼女の中ではすでにこれからの行動予定が出来上がっているらしい。
平日の夕方、こんな中途半端な時間に、長距離切符を買う客などそう居るはずもない。
彼女は購入用紙を一枚取ると、行き先だけを簡単に記入してそのまま窓口に差し出した。
「大曲まで一人、東京駅発六時過ぎの『こまち三十一号』だったかしら……」
「嗚呼、そうですね、六時五十六分発です。一万六千百七十円です。禁煙席でよろしいですか?」
駅員の問いかけに、彼女がチラッと僕の方を振り返った。
「ええ、結構です」
僕を見て、タバコは吸わないと踏んだらしい。
食事をしたせいか、少しずつ血糖値が上がってきて、僕の頭は段々とまわりの状況を把握しはじめていた。
チケットを手に僕の方へと戻ってきた彼女の姿を、僕はその時はじめてゆっくりと見ることができたんだ。