僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「さ、行きましょう、東京駅まで見送るわ」
そう言って歩きだした彼女の背中を、僕はまた追いかける。
彼女は後ろを振り向きもせず、どんどんと自動改札を抜けていった。
僕は手にしたチケットを改札に通し、必死でその後を追う。
彼女の着た薄ピンク色のニットを見失わないよう覚束ない足取りで階段を登り中央線快速のホームに出ると、丁度目の前に電車が滑り込んでくるところだった。
彼女は少し先を行き、開いた扉から電車に乗り込んだ。
僕は、同じ車両の一つ手前の扉に乗り込んだ。
何故か、少し距離をおいた方がいいように思ったんだ。
彼女にしたって、どこの誰ともわからない、ほんの数時間前は浮浪者然として物乞いしていた男と、近しく電車に相乗りしたくはないだろう。
どうせ、行く先は終点だ。
逸れなければいいだけのことだ。