僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

(あっ、しまった)

それは、ロッカーの鍵だった。

僕は駅のロッカーに荷物を預けたことを思い出していた。

何日か前、かなり強い雨が降って、荷物が濡れるのが嫌でコインロッカーに預けたのだ。

でも、その雨は翌日も降り止むことなく容赦なく降り続き、僕は荷物を受け出すタイミングを失った。

空腹もあって、判断能力が低下していたし、行動自体も緩慢になり、もうどうにでもなれといった気分であったことも確かで。

そんなこんなで、遅延金を払わないと荷物は引き受けられない、そんな状況に陥ってしまっていたのだ。

鍵だけは後生大事に持ち歩いてはいたが、いつまでその荷物を保管しておいてもれえるかも分からずじまい。

『しまった』も何もない。

もう取りに行ける荷物ではなかったのだ。
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