青空ライン *Third Story*
「おい、杏だろ?」
誰だろ?
聞いたことのない声ではなかった。
でも、あたしの名前を男の人が呼ぶ人なんてすごく限られている。
サッカー部のみんなは「二ノ宮」って苗字呼びするし。
優と付き合ってから「杏」と一瞬いろんなサッカー部の人が呼んできたことがあったけど、
みんなに「名前で呼ぶんじゃねぇ。」って少し怒ったような口調で言ってそれ以来はなくなった。
だから名前で呼ぶ人と言えば…
優…
あるいは
「圭…」
しかいない。
おそらく
遅刻ギリギリで学校まで一生懸命走っていたと思われる圭だった。
彼の制服は走ったせいか少し乱れていて、でも息切れはしていなかった。