青空ライン *Third Story*
部屋から消えていった優に一度だけ名前を呼んでみた。
「ゆ…う…」
それは蚊の泣くような小さな声で階段を降りている優に届くことはなかった。
あの残像が消えない。
消えてしまえば今から優に飛び付くこともできるのに……
女の人からキスをしたならまだ許せるかもしれないけど
そうじゃない。
キスをしたのは優だ。
もしかしたら優が会いに来たのはお別れをするために会いに来たのかもしれない。
「好きな人ができたから
もう杏とは付き合えない…
別れてくれ」
って……
自分で想像をしてみただけなのにそれがあながち外れてもいなさそうで
あたしはふとんに顔を埋めて涙が止まるまでずっと泣いていた。