君色
しばらくすると締め切り直前になりアトリエは修羅場となった。

トーコ先生は徹夜したり、アシスタントたちも泊り込んだりと、非日常的な毎日になる。

「お疲れ様です」

アトリエの入り口にある暖簾をくぐり岡田さんが顔を出した。

「イオリン、やっと来たー」

突然みっちゃんが変なニックネームで岡田さんを呼んだ。

「そうそう、イオリン手伝って」

実夏ちゃんまでもがそのニックネームで呼ぶ。

「そう思って・・・今日はお手伝いに来たんですよ」

変なニックネームには驚いたみたいだけど、岡田さんは私とみっちゃんの間に来て説明を聞いていた。

説明を聞き終わると、岡田さんはジャケットを脱いでYシャツの袖を捲り上げた。

ジャケットを着ていたときはわからなかったけど、Yシャツを捲り上げたことによって見える腕が思ったより筋肉質だった。

なんとなく岡田さんが隣にいるだけで、私は息がつまりそうになる。
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