さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「ど、どちら様ですか?」
閉まった襖の前には、黒い人影。
行灯で照らされるだけだから、顔まではっきりとは捉えられない。
判るのは、少し小型な男の人って事。
シルエットが私に近づいてくる。
「来ないでください!」
なに、この人!
布団に腰を落としている私と、彼の距離は一メートルもなかった。
ここまで近づくと姿形が見える。
闇に紛れるような、真っ黒の衣装に全身包まれて、マスクの様な物を被って目だけを覗かせている。
切れ長の、鋭い目。
怖い。
不安が私の心を侵食していった。