さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「沖田さん・・・。」
沖田さんは、ただただ前を見て歩き続ける。
私に優しい言葉をかけてくれるわけでもなく。
振り向いて翼を見ると、切なそうに少し微笑んで、私を追うことなくただこっちを見ていた。
ごめんなさい、翼。
ひとつは今沖田さんの手を振り払って翼のもとに走って行けないこと、ごめんなさい。
もうひとつは、“帰ろう”と言われたとき、迷ってしまった自分がいたこと。
そして、今こうして沖田さんが連れ出してくれたのが嬉しいと思っていること、ごめんなさい。
この時もうすでに、私の決心は固まっていたのかもしれない。
「勝手に行動しちゃ駄目だよ。危ないから。」
沖田さんの声、は少し怒ってるようにも聞こえた。
「ごめんなさい、私夢中で。沖田さんにもらったかんざしだけは絶対に取り戻さないとって・・・。」
「・・・っはは!」
さっきとは逆に楽しそうに声をあげた。
「まったく、無茶をするね。いきなり敵の中に飛び込んでくるし。」
本当に自分でもよくあそこで行けたと思う。
というか、思わず沖田さんに指示なんか出しちゃったし。
「格好良かったよ、凄く。」
沖田さんはそう言って目を三日月形に歪めた。
私は沖田さんの笑顔に弱いみたい。
だって、ほら。
またこんなに顔が熱い。